月別アーカイブ: 2014年6月

巨匠の断面

一般的に「間取り」を書き込んだ平面図が

建築図面のメインだと捉えられがちだけれど、

住まい手の空間認識に大きく作用する断面計画を書き込んだ矩計図が

建築図面の肝だと思う.

 

planningならぬsectioning.

 

断面をいじる建築家はたくさんいるけれど、

それが立体的な空間イメージに基づく ある必然性をもった骨格として

うまくできているものは多くないと思う.

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左は吉村順三の「青山の家」の断面.

立つ、座る、外を見る、歩く、立ち止まる、曲がる

図面の中を散歩することができる, 日常の中にゆったりした気持ちをつくる.

 

巨匠の断面は圧倒的な具体性を持って迫ってくる.

『動物と向き合って生きる』

北海道旭山動物園の獣医であった坂東元さん(現在は当園園長)の

『動物と向き合って生きる』という本を読みました.

 

本の中で一貫して述べられているのは、

「自然動物は尊厳に満ちた存在である」ということだ.

この考え方を基本として、この動物園を一躍有名にしたきっかけである「行動展示」が計画されてきた.

 

「尊厳に満ちた存在」とはどういうことか.

野生動物は「他種の生き物を信用しない」、また「しつけることができない」もので、

ペットや家畜とは異なる生き物だと坂東さんは述べている.

坂東さんが飼育員として勤め始めた頃、保護されてきたヒグマの子供との体験が本の中に記されている.

『その子グマは絶対になつかなかった. ぼくに対しても、決して気をゆるしてこないのだ.』

『子グマは、ミルクを飲まなければ死んでしまう. それなのに、ぼくが見ている限り、絶対に飲まないのだ.』

『考えてみれば、当然だった. 食べる側と食べられる側が混在して生きている自然界では、相手に依存したら、生きていけない.』

『子グマから見たら、ぼくという動物に、いつ食われてしまうかわからない瀬戸際に立っている. そんなヤツが差し出すミルクをどうして飲めるだろうか. それを飲むことは、死を意味している.』

 

この子グマの意思は、厳しい自然界に生きるということを考えるとよく理解できるけれど、

人工的な環境に浸かっている僕ら人間からすると、とても衝撃的である.

エサを食べずに死んでいく動物たちは、自然界で自分たちが培ってきた本能に従って

「ただ生きている」という状況であり、決して「生」に執着することはない.

このような「潔さ」や「逞しさ」を、坂東さんは「尊厳に満ちた」と表現している.

 

動物園の動物への見る目が今までと少し変わりました.

今度動物園に行ったときには、動物たちの堂々とした姿が、より凛々しく 美しく映るかもしれない.

新たな人生

宝塚ですすめている計画の解体工事が始まりました.

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解体の瞬間は、

長い間 閉じられていた場所に

光が差し込み 風が通り抜けて、

建物が新しい感覚を味わっているように感じます.

大阪梅田のスカイビルへ.

 

新梅田シティと呼ばれる一帯は

万博公園のデザインでも有名な造園家の吉村元男がランドスケープデザインを手がけており、

都心のど真ん中に棚田や竹林、水辺を絡めた里山の自然が計画されている.

人工的な自然を丹念につくりこみ、生態系がそこにつくりだされている様は圧巻だ.

 

ところがこのランドスケープの一部に突如として高さ9m長さ78mの緑の壁が立ちはだかった.

安藤忠雄の構想で積水ハウスが施工した「希望の壁」なるものだ.

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吉村氏が「この庭園は創造性をもった著作物だ」と主張して工事中止の仮処分を求めたこともあって

この壁の設置はかなり暴力的なのではないかと以前から感じていたけれど、

実際に行ってみた印象はそれほど威圧的ではないような印象を受けた.

 

ただ、吉村氏の生み出した庭園と調和がとれているかどうかという点で見ると

この異なる緑のあり様は非常にお粗末なものだとしか言いようがないだろう.

 

この庭は誰でも真似できるものではないし、極めて繊細につくられているということが専門家でなくとも分かる.

そんな場所に突如として大味な塊を鎮座させることは、法的に問題なくとも 何とも無粋だなあと思う.

 

住宅メーカーならば、新しいものに飛びつく前に もう少しこの庭園への理解を深め 敬意を表するのが先ではないだろうか.

 

 

動物園の設計がしたい

2週連続で名古屋の東山動物園へ.

 

職業病なんだろうけれど、どこへ出かけても

「ここの床仕上はタイルより石の方がいいんじゃないか」とか

「ここに窓を付けるともっと風が抜けて心地いいんじゃないか」とか、

どういう根拠で建物やランドスケープがつくられているかという部分に目がいってしまう.

 

東山でもそれがあって、より魅力的な展示にするにはどうしたらいいかと考える.

 

例えば、正門を抜けたエントランスのスペース.

動物園はエンターテイメントだという言い方ができるとすると、

正門から入って右側にインドサイ、次に左側にアジアゾウという

大型動物を立て続けに 間近に見ることできるのは、イントロダクションとしてとても迫力がある.


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だけど、もったいないと思うのは

正門からインドサイに至るまで100mはあろうかという道の途中に動物の展示がなく、

噴水広場や池が広がってるだけのスペースをただ無心で歩かなければならないことだ.

 

ディズニーラントよりも広大な敷地を有する東山、のびやかな空間づくりがされているのは結構だけれど

来園者の気持ちを盛り上げる演出があってもいいのかなと思う.

 

旧アジアゾウ舎の跡地(インドサイ舎の隣)には休憩所が整備されるようだけど、

本園エリアだけでもすでにたくさんの休憩所がある.

来園者が最初にたどり着く場所に休憩所をつくるよりは、

来園者の好奇心が動物へと向かうような展示をする方が

心に残る動物園になるだろう.