月別アーカイブ: 2016年5月

現実との距離

先日ブログに書いた階段の検討を経て、

実物が出来上がりつつあります.

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まだ仕上げ工事前で手摺も付いていませんが、

大工さんや監督さんが関わって多角的に検討・調整されたことで

現実に存在する「モノ」としてのありようが見出されたように思います.

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設計という行為は、世の中に存在しないものを存在させる行為でもあるので

世の中に既に存在しているものの中できちんと調和を保ったりなじんだりできるものをつくらなければ、

設計者の身勝手な造形行為に終始してしまう.

できるだけ違和感を減らすために、何度も検討するように心がけています.

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はな子

東京に住んでいた頃、建築士の資格学校へ通うために毎週吉祥寺へ行っていました.

当時は勉強に必死だったので この街自体にはあまり思い入れが無いのだけれど、

妻と結婚する前に 一緒に井の頭公園に行ったときのことを思い出します.

 

東京で風情があるところは、地方のにおいが残っているのかもしれない.

駅から歩くと公園への階段が続く脇に焼き鳥屋が見えて 煙が立ち込めている.

小さい頃地元の商店街で見たような景色. 今は少なくなった哀愁漂う風景.

東京は最も地方的であるという言い方もできる.

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公園内はそれぞれが思うままに時間を過ごしている.

ジョギング、散歩、昼寝、おしゃべり.

互いに干渉しない 緩やかに受け入れている曖昧さ.

それが大都会のすぐ傍で成り立っている.

 

そんな井の頭公園内には動物園があって、国内最高齢のゾウであるはな子が生きていた.

そのはな子が昨日69歳で亡くなりました.

 

ゾウはかしこい動物なので、その穏やかな目に見つめられるとドキっとすることがあります.

人間の都合で野生から 故郷から切り離されて、長い間餌を与えられ続けている動物たち.

特にゾウに関して 僕は少しの罪悪感を持って見つめ返してしまいます.

数年前、はな子に初めて会ったとき その目に見透かされているような気がしました.

 

そのはな子が亡くなりました.

彼女は自分の人生をどう振り返っているのだろう.

 

 

目に見えるものの内側

原寸図(実際につくるものと同じ縮尺の図)を描いて回り階段の検討をしていただきました.

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建築は、素材・寸法・色・工法・納まり・コスト等々・・全てが決定されないと実際につくることができません.

設計図で示しているのは完成した状況であるので、

「どうやってつくるか」という視点で考えていただき全てが整合するように調整していきます.

 

このつくり手の力があって 初めて本物が出来上がっていきます.

どんなものが見えるかな どういう風に感じるかな

家族3人で東山動物園へ.

8ヶ月の息子は動物よりもたくさんの人や緑や構造物や

においや鳴き声や風に心を奪われていましたが、

唯一アフリカゾウだけは認識したようで 興奮気味に見ていました.

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考えてみれば毎日が生まれて初めての体験であふれているこの時期に、

珍しい動物を見せたいなどと言うのは親の勝手な願望で、

彼の目にはアフリカゾウも背後の緑もゾウ舎の建物や堀も分け隔てなく

全てが瑞々しい新鮮さをもっているんだろう.

 

それでもアフリカゾウを嬉しそうに見ているのを見て

連れて来てよかったなと思いました.