東京に住んでいた頃、建築士の資格学校へ通うために毎週吉祥寺へ行っていました.
当時は勉強に必死だったので この街自体にはあまり思い入れが無いのだけれど、
妻と結婚する前に 一緒に井の頭公園に行ったときのことを思い出します.
東京で風情があるところは、地方のにおいが残っているのかもしれない.
駅から歩くと公園への階段が続く脇に焼き鳥屋が見えて 煙が立ち込めている.
小さい頃地元の商店街で見たような景色. 今は少なくなった哀愁漂う風景.
東京は最も地方的であるという言い方もできる.
公園内はそれぞれが思うままに時間を過ごしている.
ジョギング、散歩、昼寝、おしゃべり.
互いに干渉しない 緩やかに受け入れている曖昧さ.
それが大都会のすぐ傍で成り立っている.
そんな井の頭公園内には動物園があって、国内最高齢のゾウであるはな子が生きていた.
そのはな子が昨日69歳で亡くなりました.
ゾウはかしこい動物なので、その穏やかな目に見つめられるとドキっとすることがあります.
人間の都合で野生から 故郷から切り離されて、長い間餌を与えられ続けている動物たち.
特にゾウに関して 僕は少しの罪悪感を持って見つめ返してしまいます.
数年前、はな子に初めて会ったとき その目に見透かされているような気がしました.
そのはな子が亡くなりました.
彼女は自分の人生をどう振り返っているのだろう.