月別アーカイブ: 2016年11月

誰もが障害をもっている

新建築家技術者集団愛知支部の企画による身体障害の方の住宅見学に参加しました.

施設ではなく、ヘルパーの介助を受けながら一人暮らしをしている方のお宅で、
補助金を活用して賃貸住宅を改修し、自分らしく生活をしている様を目の当たりにしました.

自分の時間、自分の空間を確保したいという当たり前の要求を獲得するために、
社会の理解、行政の理解、地域の理解、大家さんの理解、親の理解等、多くの障壁を乗り越えて
今の環境が実現されたということが分かりました.

今回見学した2つの住宅の住み手はお二方ともとても行動力のある方で、
AIJ自立の家という障害者支援団体の協力を仰ぎながら粘り強く社会と向き合ってこられました.

ただ同じように社会と向き合い続けられる人ばかりではないので、
支援制度がもっと充実していくように、自分も含めて勉強を重ねて、社会全体の理解が少しでも深まるように動いていかなければならないと感じました.

僕自身も視力が弱い、また背が高いのでよく鴨居等で頭を打つという点で
社会で生きていくうえでの障害を持っています.
誰しもが持っている障害に対して、建築士はどのようにその職能で貢献できるのかという意識をもって
今後もいろんな設計業務に取り組んでいきたいと思います.

涼やかな建築体験

神戸市北区の里山住宅博へ.
堀部安嗣さんの設計による建売住宅を見学してきました.

堀部さんは今まで依頼されたクライアントのために緻密につくり込んだ住宅を設計してきた.
その一方で、長い時を経て住み手や用途が変わってもその場所に在り続けるような強い自立性への志向をもっている.
実はその考えは、クライアントが特定できない「建売」というスタイルの設計において有効に働くのではないか、どんな住み手も受け入れる寛容さという意味において「建売住宅」と相性が良いのではないか、と思っていた.

だから、このプロジェクトで堀部さんがどんなチャレンジを、どんな取捨選択をするのかがとても興味深いと感じていた.

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実際に訪れてみて感じたのが、堀部さんの思考の跡がすごくよく見えたことだ.
堀部さんが建築設計者に人気がある理由のひとつとして、この思考の跡が滲み出ていることが挙げられると思う.
細部のつくり込みと手の放し方のバランスが良いなと感じる一方で、コストのかけ方や建売における納まりという点で考えさせれられる部分もたくさんあった.
僕が依頼される建売住宅ではこうはいかない.
でも乗り越える方法は射程距離の中にいくらでもあるという感覚も持っている.

とても充実した空間体験をさせてもらいました.

 

『大事なことは、聞き逃してしまうほど平凡な言葉で語られる』

友人からのすすめで『火山のふもとで』(著:松家仁之)という本を読みました.
標題の言葉が本の帯に付されています.

吉村順三を想起させる寡黙な建築家の事務所に入所した若者の物語です.

執筆の際に意識されたのは、場面を的確にかつ広がりをもって読者に届けるための
言葉の選択、間合い、リズムだったのだろうか.
建築家がディティールを、間を、ものの流れをいつくしみ設計していくことに敬意を表するように
この本自体が丁寧につくりこまれた住宅建築であるかのような簡素さと美しさを湛えている.

大事に持っていたい文章がいくつも散りばめられた一冊でした.