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自分の子どもをこの建築で遊ばせたいか

昨日は非常勤講師を務めている金城学院大学の講義最終日でした.

今までいろいろな学校で設計課題の講師をやってきましたが、
今回初めて一人で講義を受け持った(設計の授業は複数人で担当する場合が多い)ため、
シラバスの提出、カリキュラムや授業構成の検討、設計課題や授業資料の作成など
講義に関わる全てのことをさせていただきました.

特に設計課題の作成は学生のやる気や作品の完成度に大きく影響するため、
講義を通して学生に何を獲得してほしいかということをよく考える必要があります.

 

大学専任の先生と相談をして今回新しいチャレンジをした点は

・建物を設計する敷地を学生自らが選定する
(一般的には決まった敷地が設定されていて、全ての学生が同じ条件のもとで設計します)

・建物の用途を学生自らが選定する
(一般的には「住宅」や「店舗」など、建物の用途が条件として提示されています)

・個人制作とグループ制作のどちらかを学生自らが選定する
(一般的には個人制作が多いです)

さらに、学生が今までの授業で課されてこなかった1/50の模型(家具や仕上材まで作り込む)や
3Dのプレゼン表現なども取り入れてもらいました.

学生が自ら判断してものごとを決めていく範囲が広いため 最初は戸惑いがあったかと思いますが、
きっかけを掴むと多くの学生が積極的に取り組むことができたように思います.

 

建築には正解がありません.
設計のプロセスや技術についても「こうやれば良い」と言い切れるものはありません.
(よく学生に「これで良いですか?」と聞かれますが)

ですので、学生からの質問に対して曖昧な回答になったり、ヒントを与えて後は自分で考えてもらうといった指導をする場合があります.
まずは、建築設計という分野が 一生かけても答えが出ないかもしれないような不確実さを持っているという事実を理解してもらうということが
建築を学ぶにあたって大切なことだと感じています.

それにしても学生たちは総じて優秀で真面目だと感じました.
粘り強くこつこつと模型や図面に向き合うことができていて、至らない講師にも関わらず成果が多く見られました.

『子どものための施設』という課題テーマに対して真剣に考えたこの経験が、
将来彼女たちが子を持つ身になったときに、自分の考えを構築する何らかのきっかけになれば嬉しいと思います.
「自分の子どもをこの建築で遊ばせたいか」というリアリティが、今回の提案とは違った想いを生むかもしれません.

 

今回の講義は3年生対象で、
今後は後期の授業を経て卒業制作、就職活動と より広い社会での自身の位置付けを模索していきます.

みんなのために建築はある

ある街の企画住宅、その名も「木角(きかく)の家」.
現場確認してきました.

良質な住宅を低価格で提供することを目指して、
様々な工夫を凝らしています.

 

玄関ホールの省略.
玄関土間から直接リビングスペースに上がります.
引込戸によって玄関とリビングを分けることもできます.

天井を貼らない踏天井で建物を低く抑えています、
梁上の合板に直接2階のフローリングが貼られているので2階の物音が直接的に聞こえますが、
1階の空間の広がりとコストを考慮して採用しています.

2階は間仕切りを住み手の使い方に応じてつくれるように
ガランドウで引き渡します.
家具で緩やかに部屋を分ける等、間取りのパターンをいくつか提案しています.

洗面の鏡収納は窓枠に付けたレールの上を滑らせています.
(木の部分には鏡が貼り付けられます)
奥には引き違い窓があるため、この鏡収納を隅に寄せるとクレセントが現れて
窓を開閉できるようになっています.

バルコニーの奥行きは1365mmで、建売住宅としては少しゆったりした広さがあります.

シンプルで住む人に合わせて変化する家、もう一息で完成です.

おおらかな屋根と暗がり

愛知県長久手市にある万博記念公園へ.

2005年の愛・地球博の後に、博覧会の理念を継承し発展させる施設として地球市民交流センターが建設されました.
設計は山下設計、アドバイザーとしてアトリエ・ワンが関わっています.

内部は大屋根に覆われた半屋外空間と、それを囲むように配置された屋内空間で構成されています.
屋内空間は学習室やスタジオ、会議室等の用途を備えています.

夏の日中でありながら大屋根の下は風が抜け、日差しが遮られることで心地良い場所になっていました.所々にうがたれた大きなトップライトから光が注ぎ、屋内空間一体に明るさと暗さのムラができています.

ここは様々なイベントが行われて多くの人が集まる場所ですが、このムラと全体の適度な暗さが
人と人が近付き過ぎることの不快感を緩和してくれていると感じました.
暗闇には奥行きを感じ、その先に広がりを感じます.

加えて、建物周囲は公園の緑が取り囲んでいます.
暗い場所から輝く緑を眺めると、今まで近くにあった緑とは違ったものに見えて
物理的距離よりも離れた存在として感じます.

おおらかな屋根の下には、日常と程よい距離感をもった特別な体験ができる場所が用意されていました.

予想外

two house の地盤調査.

予想より地盤が悪く、擁壁近くに建築することもあって
基礎の検討をする必要がありそうです.

まずは調査会社の見解をもとに地盤改良の方法を決定し、
その後基礎の深さや形状を考えていきます,

地面の下の見えない部分ですが、ここに思わぬ費用がかかる場合があります.

できるだけコストパフォーマンスの良い選択ができればと思います.

現地調査で考えたこと

梅雨の合間に三重県伊賀の計画地へ.

現地には出来る限り公共交通機関で行くようにしています.
最寄駅からの風景や街並み、そこで生活している人々の息吹等をゆっくり観察できて、
得られる情報が多いように思うからです.
(車の運転が苦手ということもありますが)

伊賀鉄道の最寄駅.
伊賀鉄道は近鉄に接続しているので、大阪や名古屋にアクセス可能です.

周辺にはのどかな田園風景が広がっています.

地域の集会所.
立派ではないけれど、用途に即したシンプルな建ち方.
過不足のない風景を、時間をかけてつくってきているように感じます.

隣接する広場ではよくゲートボールが行なわれています.

敷地は南に緩やかにのぼる坂の途中に位置しています.

敷地の先には地域の小学校があり、この道は子どもの通学路にもなっています.

逆を見返すと北下がりの斜面です.

家をつくるとき、北側の窓は日当たりが悪いという理由で積極的に採用されないように思いますが、
実は北側の景色は背後(南側)からの日射で緑を鮮やかに見せます.
直接室内に日が射すことは少ないですが、落ち着いた室内から北側の窓で効果的に切り取った風景を眺めることは、
とても贅沢なことだと思います.

特にこの敷地周辺は北下がりの土地なので、遠くまで見渡せてすがすがしい気持ちになります.

この眺めと静かでゆったりした雰囲気の中で
外の環境とつながり、同時に住まい手を外の環境から守るというバランスを
探します.