村野藤吾の椅子で

仕事とプライベートを兼ねて関西方面へ.

まさかの携帯電話紛失で待ち合わせなどにドキドキしましたが、
何とかミッションをこなしてきました.
関係者の皆様にはいろいろとご迷惑をかけてしまい、すみませんでした..

そんな中恩師に会うために大阪で待ち合わせ.

事前に連絡して携帯電話が使えない旨を伝えると、
「上本町の都ホテル1階ロビーにある村野藤吾がデザインした椅子で」
ということになりました.

最近は待ち合わせ場所が曖昧でも現地で連絡を取り合えばいいということで、
具体的な場所を決めることが少なくなった.
でも、こんなに具体的に待ち合わせ場所を決めると安心感がある.
椅子に座って待っているイメージが具体的にできるからだろうか.
そして、必ず会えるという確信が持てるからだろうか.

少し早めに行って、座り心地を堪能しました.

デビュー

先日進捗をアップした木角の家が完成し、工務店主催でオープンハウスが開催されています.
9月いっぱい迄土日は毎週行われており、工務店のスタッフにご案内いただけるそうです.

完成写真は追ってアップしますが、この機会に設計事務所が工務店を組んでつくった標準化住宅をご覧いただければと思います.

ご興味ある方はきりんのコンタクトフォームからご連絡いただければ
詳細情報をご返信いたします.
(私が現地のご案内をすることも可能です)

すでにご購入の申し込みがあり、ブラッシュアップした2棟目の建築も進んでいます.
一般解として考えてきたことを込めており、社会への拡張性という意味で可能性を感じるプロジェクトです.

仕事がすすむとき

建築設計の検討(スタディと言います)には、膨大な時間を費やします.

あれこれと試行錯誤を繰り返し、ようやく固まってきても調整を重ね、
他によい案が出ればまたゼロからやり直し.
クライアントの要望やコストオーバー等の予期せぬ事態も絡んできます.

 

積み上げては崩してまた積み上げる 果ての無いような作業の中で、
積み上げるピースの形や状況が何となく分かってくる.

すると、「ここにこれを積むと次にこれが積める」とか
「これをあそこまで積むとこんな形になる」とか、先が読めるようになる.

感覚をつかみ始めると、短時間でいろいろなバリエーションが展開できるようになる.
さらにそれらのいい悪いの判断もすばやく出来るようになる.

何度もこの作業を繰り返す.
次第にその場所にあるべき建築の姿が見えてくる.

設計は積み上げる作業だけれども、
最終的にはそこに自然な佇まいで存在できるものを明らかにしていく感覚がある.
そう考えると、木や石の中に姿形を見い出し 彫り起こしていく彫刻家の作業に近いものがある.

 

スタディに終わりは無いですが、「これでいい」と心に落ちるまでは続けるようにしています.
もう少し続けたらもっと良いものになったかもしれないし、全然違うものでも成り立ちうるかもしれないけれど、
「これでいい」と思えたらある一つの正解に達したのではないかと思います.

経験を重ねて「これでいい」の感覚とそれに対応した建築や空間の精度を上げていきたいと思います.
そして、こんな生産性の無い仕事を理解し(ようとし)てくれる家族への感謝を心に留めていたいと思います.

やさしくデザインする

息子の誕生日に、妻がかわいい花を買ってきました.

白や薄いグリーンが基調の、華美ではないけれど品のある静かな雰囲気の花束です.

それを見て、「やさしくデザインする」ということを考えました.

 

何かをデザインする時、デザインする人間はそこに自分の個性やセンスを込めようとする.
ただそれがあまり強い主張になりすぎると、受け手に対してもあたりが強くなってしまう.

確かに芸術作品の中には受け手の価値観を覆すような強い表現があって、
それはそれで意義深いとも思う.

ただ日常に寄り添ったものをデザインする場合、強い表現は強い刺激やともすれば受け手に対する攻撃となり、日々の感覚になじまないことがあるように思う.
強い表現には「こう見て下さい」とか「こう見られたい」というつくり手の一方的な想いを感じてしまう.
(これを設計者の仲間内で「いやらしさ」と表現することがある)

デザインされたものをどのように受け取るかということは、本来受け手に与えられている自由であり
自由な受け取り方を許容するような懐の深いデザインに憧れる.

 

以前ある建築家に教えてもらった花屋で、妻と一緒に花束を買ったことがあります.
そこは花のラインナップ、店内の雰囲気、店員さんの服装等どれも「簡素なオシャレ」を徹底していて
ストイックな雰囲気を醸し出していました.

お客さんの想いを汲むのではなく、「自分たちの商品はこうです」とスタイルを固持するスタンス.
そういうスタンスにファンがついてくるのか商品の価格は総じて高め.
建築家の間でもよく名前が出る有名なお店ですが、「お高くとまっている」というのが僕らの共通した印象でした.

今回お世話になった花屋のような、こだわりと柔軟さのバランスが心地さをもたらすものづくりをするためには
どうしたら良いか 考えています.

これで良かったのか

今まで設計した建物を手描き図面でおこしています.

僕の世代は図面をCAD、いわゆるパソコンソフトで描くのが一般的ですが、
上の世代は製図板にトレーシングペーパーを貼って手描きで図面を描いていた時代があります.
今でも建築士の製図試験は手描きで実施されていますが、それ以外で若い設計者が手描きを必要とされる場面は少なくなってきています.

手描きの図面は描く人の迷いや自信などの心の持ち様が表れるということで
施工者にとっては描かれている事実以上に伝わるものがあると聞きます.

大学院時代に建築家の図面をトレースすることに始まり、卒業設計もたくさんの手描き図面を描きました.
手描き図面の何とも言えない「味」がかっこいいと思っていました(つまりコミュニケーションツールとしてではなくプレゼンスタイルとしての手描き)が、
こうして過去の仕事の軌跡を辿ることは、自分の今後のものづくりの方向性を再確認させてくれると感じました.
あの判断はどうだったのかと.

今後、描いた図面はHPにUPしていく予定です.

自分の子どもをこの建築で遊ばせたいか

昨日は非常勤講師を務めている金城学院大学の講義最終日でした.

今までいろいろな学校で設計課題の講師をやってきましたが、
今回初めて一人で講義を受け持った(設計の授業は複数人で担当する場合が多い)ため、
シラバスの提出、カリキュラムや授業構成の検討、設計課題や授業資料の作成など
講義に関わる全てのことをさせていただきました.

特に設計課題の作成は学生のやる気や作品の完成度に大きく影響するため、
講義を通して学生に何を獲得してほしいかということをよく考える必要があります.

 

大学専任の先生と相談をして今回新しいチャレンジをした点は

・建物を設計する敷地を学生自らが選定する
(一般的には決まった敷地が設定されていて、全ての学生が同じ条件のもとで設計します)

・建物の用途を学生自らが選定する
(一般的には「住宅」や「店舗」など、建物の用途が条件として提示されています)

・個人制作とグループ制作のどちらかを学生自らが選定する
(一般的には個人制作が多いです)

さらに、学生が今までの授業で課されてこなかった1/50の模型(家具や仕上材まで作り込む)や
3Dのプレゼン表現なども取り入れてもらいました.

学生が自ら判断してものごとを決めていく範囲が広いため 最初は戸惑いがあったかと思いますが、
きっかけを掴むと多くの学生が積極的に取り組むことができたように思います.

 

建築には正解がありません.
設計のプロセスや技術についても「こうやれば良い」と言い切れるものはありません.
(よく学生に「これで良いですか?」と聞かれますが)

ですので、学生からの質問に対して曖昧な回答になったり、ヒントを与えて後は自分で考えてもらうといった指導をする場合があります.
まずは、建築設計という分野が 一生かけても答えが出ないかもしれないような不確実さを持っているという事実を理解してもらうということが
建築を学ぶにあたって大切なことだと感じています.

それにしても学生たちは総じて優秀で真面目だと感じました.
粘り強くこつこつと模型や図面に向き合うことができていて、至らない講師にも関わらず成果が多く見られました.

『子どものための施設』という課題テーマに対して真剣に考えたこの経験が、
将来彼女たちが子を持つ身になったときに、自分の考えを構築する何らかのきっかけになれば嬉しいと思います.
「自分の子どもをこの建築で遊ばせたいか」というリアリティが、今回の提案とは違った想いを生むかもしれません.

 

今回の講義は3年生対象で、
今後は後期の授業を経て卒業制作、就職活動と より広い社会での自身の位置付けを模索していきます.

みんなのために建築はある

ある街の企画住宅、その名も「木角(きかく)の家」.
現場確認してきました.

良質な住宅を低価格で提供することを目指して、
様々な工夫を凝らしています.

 

玄関ホールの省略.
玄関土間から直接リビングスペースに上がります.
引込戸によって玄関とリビングを分けることもできます.

天井を貼らない踏天井で建物を低く抑えています、
梁上の合板に直接2階のフローリングが貼られているので2階の物音が直接的に聞こえますが、
1階の空間の広がりとコストを考慮して採用しています.

2階は間仕切りを住み手の使い方に応じてつくれるように
ガランドウで引き渡します.
家具で緩やかに部屋を分ける等、間取りのパターンをいくつか提案しています.

洗面の鏡収納は窓枠に付けたレールの上を滑らせています.
(木の部分には鏡が貼り付けられます)
奥には引き違い窓があるため、この鏡収納を隅に寄せるとクレセントが現れて
窓を開閉できるようになっています.

バルコニーの奥行きは1365mmで、建売住宅としては少しゆったりした広さがあります.

シンプルで住む人に合わせて変化する家、もう一息で完成です.

おおらかな屋根と暗がり

愛知県長久手市にある万博記念公園へ.

2005年の愛・地球博の後に、博覧会の理念を継承し発展させる施設として地球市民交流センターが建設されました.
設計は山下設計、アドバイザーとしてアトリエ・ワンが関わっています.

内部は大屋根に覆われた半屋外空間と、それを囲むように配置された屋内空間で構成されています.
屋内空間は学習室やスタジオ、会議室等の用途を備えています.

夏の日中でありながら大屋根の下は風が抜け、日差しが遮られることで心地良い場所になっていました.所々にうがたれた大きなトップライトから光が注ぎ、屋内空間一体に明るさと暗さのムラができています.

ここは様々なイベントが行われて多くの人が集まる場所ですが、このムラと全体の適度な暗さが
人と人が近付き過ぎることの不快感を緩和してくれていると感じました.
暗闇には奥行きを感じ、その先に広がりを感じます.

加えて、建物周囲は公園の緑が取り囲んでいます.
暗い場所から輝く緑を眺めると、今まで近くにあった緑とは違ったものに見えて
物理的距離よりも離れた存在として感じます.

おおらかな屋根の下には、日常と程よい距離感をもった特別な体験ができる場所が用意されていました.

予想外

two house の地盤調査.

予想より地盤が悪く、擁壁近くに建築することもあって
基礎の検討をする必要がありそうです.

まずは調査会社の見解をもとに地盤改良の方法を決定し、
その後基礎の深さや形状を考えていきます,

地面の下の見えない部分ですが、ここに思わぬ費用がかかる場合があります.

できるだけコストパフォーマンスの良い選択ができればと思います.